アメリカの不動産売買について(総論)

アメリカの不動産売買について(総論)

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19th Oct 2023

アメリカの不動産売買について(総論)

資産運用の一環で、アメリカの不動産への投資を検討されたことはありますでしょうか。 投資のポートフォリオとして日本以外の国を加えたいと考えた場合、さまざまな考え方はありますが、米ドル資産を持ちたいとお考えになることもあろうかと存じます。 ただ、アメリカと一口に言っても、ロサンゼルスのある西海岸、ニューヨークのある東海岸、ミシガン等の中西部、バージニア等の南部等、地域によってさまざまな違いがありますが、日系企業としては、日系人が多く日本からの距離的にも比較的近い西海岸が検討の候補に上がることもあるのではないかと思います。会社としての戦略を練り、地域を定め、ターゲットとなる地域を定めて物件探しを始めたとします。 ここでは、ようやく良い物件に辿り着き、Letter of Intent やMemorandum of Understandingを締結して取引を始めようとする場合を想定します。現地調査を行い、いよいよ書類の準備に取り掛かろうとする時、日本の不動産取引との違いに戸惑われることも多いと思います。 アメリカの不動産取引はさまざまな点で日本と違いがありますが、その違いを分析しているうちにあっという間に当該不動産が売れてしまうことも多く、事前にどういうものかを知っておく必要があります。 まず、アメリカには権原保険(Title Insurance)というものがあり、保険会社が不動産の権利関係を調査し、それを保証する仕組みがあります。日本では不動産登記制度が発達しており、あまり不動産の権利関係について保険をかけるという習慣はありませんが、アメリカでは権原保険をかけるのが一般的です。 また、エスクロー制度というものがあります。これは手付や売買代金等の支払いに利用されるもので、買主が支払った金銭を売主ではない第三者が預かります。一定の条件を設定し、その条件が成就した場合には、売主や買主にその金銭が支払われます。手付金が返金されなくなる事態を防ぐためのものです。 いずれもアメリカでは極めて一般的で、ほぼ定型的に権原保険をかけ、エスクローを利用して決済が行われます。 クロージングまでの期間は概して早いため、企業間のディールであれば、デューデリジェンスも含めて速やかに実施できるよう体制を整えておく必要があります。 弁護士選びに関しても同様です。アメリカの弁護士数は、130万人を超えており、日本の30倍程度となっています。その分、弁護士の専門分野も細分化しており、不動産専門の弁護士もいれば、そうではない弁護士もいます。いわゆる大手であればさまざまなコーポレートディールに対応できる弁護士が揃っていますが、もちろんコストもかかります。大規模なプロジェクトであればそのような方法もありますが、中規模のプロジェクトであれば、不動産専門の弁護士を集めた法律事務所がフィットするケースも多いかもしれません。 日系企業であれば、日本側とアメリカ側の両方に弁護士をつけて、日本の本社でしっかりと説明できる体制を整えるのも有効です。 ご相談ベースでもお受けしておりますので、ぜひお気軽にご相談ください。 Read more: Advisory Service Agreement(アドバイザリー契約)への対応について 英文の秘密保持契約への対応について 服部法律事務所 〒106-0032 東京都港区六本木7-7-7 トライセブンロッポンギ8階 電話番号:03-6629-3520

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19th Oct 2023

英文の秘密保持契約への対応について

Regarding Compliance with English Non-disclosure Agreements: 日本であっても、外国であっても、ビジネスの一番最初に秘密保持契約を締結することは多いのではないかと思います。日本語であっても法律用語が記載されていると読みにくく感じる方がたくさんいらっしゃいますが、それが英語になると、さらにハードルが高くなります。

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19th Oct 2023

Letter of Intent(英文の意向表明書)への対応について

外国企業との取引では、企業の買収や資産の購入、新たな取引を開始する場面等、さまざまな場面で、Letter of Intentという書類が送付されることがあります。文字通りに翻訳すると意向表明書となるわけですが、つまり、契約を締結する前に、先方が貴社のビジネスに興味を持っていることを書面にしたものです。 ただし、その内容は定型的ではないこともあり、先方もゼロからドラフトしていることもあります。Letter of IntentはLetter(手紙)、つまり先方がサインしたものを差し入れる形式ではあるのですが、それを受け取る側もサインする形式になっているものがあります。 契約書のタイトルは、契約書の内容とは関係ありません。もしそのLetter of Intentに約束事が記載されており、貴社もサインをしたとすると、単なる意向表明書の形式をとっていたとしても、ある条項について契約が成立したことになってしまう可能性もあります。そのため注意が必要です。 Letter of Intentが作成される場面はビジネスの初期段階ですが、この段階で作成される書類にはいくつか種類があります。 Letter of Intent:意向表明書 これは秘密保持契約が締結される前あるいはその後に、ビジネスに興味があることをしっかりと書面で伝えるときに利用されます。 Memorandum of Understanding:覚書 これはいわゆる覚書と翻訳されるもので、両当事者がサインをする形式をとっている点で、Letter of Intentとは異なります。事業の大きな枠組みについて議論の経過を記録に残す機能を持ちます。よくMOU(エム・オー・ユー)と略されます。 これらの書類は、いずれも契約を締結する前段階のものです。日本ではよく仮契約という表現がありますが、その内容や表現はさておき、MOUは仮契約というニュアンスに近いものと捉えても良いと思います。要するに、ビジネスの詳細までしっかりと決定するための契約ではなく、大きな枠組みについて共通認識を持つためのものです。 そのため、秘密保持契約の時のように翻訳ソフトで日本語版を作成し、それで内容を確認してサインをするケースもあるかもしれません。 しかしながら、こういった初期段階の契約書であっても注意が必要な場合があります。特に注意が必要なのは法的拘束力の有無です。 例えば以下のような英文があったとします。 Not Legally Binding This LOI is not legally binding with regards to completing the transaction, provided that the Exclusivity and Confidentiality provisions shall be legally binding. Bindingというのは拘束という意味で、Legally Bindingというのは法的拘束力と訳されます。それがない(Not)なので、約束を守らなくとも問題ないのでサインしても大丈夫だと思っていたら、その後に、provided thatとあります。これは日本語では「ただし」と翻訳される法律用語です。その後をよく読むと、独占交渉権や秘密保持義務に関しては法的拘束力を持つ、つまり守らなければ問題になる、という意味の文言が続いています。 タイトルにはNot Legally Bindingとありますが、契約の解釈においては、各条項のタイトルは単なる目安に過ぎません。注意が必要です。 この文章がLetter of Intentの中にあり、それが先方のみサインする形式の場合はさておき、貴社もサインする欄があり、このような記載があった場合には、約束違反の場合に関する記載があるかどうかという点や、どの部分の何を約束することになっているのかという点について、文書全体を再読する必要があります。 また、法的拘束力のない部分であっても、取引金額や出資金額のように、数字でわかりやすいものに関しては、あえて記載しないというビジネス判断もありうるところです。 LOIが作成されるのはビジネスの初期段階ですが、その段階で大枠として何を決め、その後何を交渉で決めていくのかという点、譲れない部分についてしっかりと認識を共有するという点等、考慮すべき事項は多々あります。 もしLOIの段階でお悩みがございましたら、ぜひお気軽にご連絡ください。しっかりとビジネス判断に必要な情報をご提供いたします。 服部法律事務所  〒106-0032 東京都港区六本木7-7-7 トライセブンロッポンギ8階 電話番号:03-6629-3520

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19th Oct 2023

Advisory Service Agreement(アドバイザリー契約)への対応について

Advisory Service Agreement – 海外進出を検討されていたり、日本で外資系企業とコンサルティング契約を締結する場合、英語でアドバイザリー契約を締結することがあります。何に関するアドバイスをもらうのかという問題はありますが、言語が英語であっても日本語であっても留意点はそれほど変わりません。

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26th Sep 2023

英文契約書への会社としての取組み方について

初めて外国企業と取引を始める際には、さまざまな準備が必要になります。取引先の企業がどこの企業であったとしても、言語は英語であることが大半です。英文契約の読み方については様々な弁護士が発信をしていますが、ここでは詳細に入る前に、会社としての取組み方についてお話します。 1. 社内体制の整備 社内体制の整備に関しては、日本企業と外国企業の違いを意識すると良いと思います。 外国企業との契約交渉では、特に初めての取引の場合には、詳細に取引内容をお互いに確認する傾向があります。そのため、その契約交渉の担当となるメンバーを選定します。英語力はあればベターではありますが、必須ではなく、むしろ国内企業との間でしっかりと交渉できることが大切です。英語力は、外部リソースで補完できます。 また、外国企業では決定権限のあるメンバーが交渉に深くコミットする傾向があります。他方で、日本企業の場合、交渉の担当者が持ち帰って決定権限のある方に確認を取ることが大半です。是非はさておき、この違いは交渉のスピード感を左右いたしますし、外国企業側から、交渉したのにいつまでも決められない企業だという印象をもたれてしまう恐れもありますので、可能であれば決定権限のある方が打合せに入られるのがベターです。 2. 外部リソースの選定 通訳以上のサポートが必要になることが大半であるため、国際弁護士の中から選ばれると思います。ブランドが必要な場合もあるかもしれませんし、その業界に詳しい弁護士にある程度任せたい場合もあるかもしれません。ニーズとコストを見極めながら選ばれると良いと思います。 3. PDCA 体制を組んだら、実際の交渉実務に入ってまいります。交渉の過程で担当するメンバーを追加したり、外部リソースを増やしたりするかもしれません。このような調整は特に交渉が比較的長期にわたる場合には必要になってまいります。 次回は、実際に英文契約に取り組む際にポイントとなる事項を、テクニカルなことよりも事務的にスムーズに進めるためのポイントを解説します。 服部法律事務所 〒106-0032 東京都港区六本木7-7-7 トライセブンロッポンギ8階 電話番号:03-6629-3520

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12th Aug 2023

日本の国際取引弁護士|国際取引のための専門的な法的サポート

2021年にコーポレート・ガバナンス・コードが改訂され、東証のプライム市場に対してTCFD(Task Force on Climate-related Financial Disclosures)又はそれと同等の基準に基づく開示が義務付けられました。これは気候変動のリスクに関するものですが、環境への意識が高まっていることを示しています。

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29th Jul 2023

東京のSDGs弁護士|SDGs関連の法的サポート

近年、最新の金融のトレンドに敏感でなくとも、SDGsやESGという単語を聞かない日はなかったのではないでしょうか。

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27th Jul 2023

日本での英語による法的サービスについて:日本とアメリカの弁護士資格を持つ東京の法律事務所

例えば、外国企業との取引について契約を締結しようと考えたとき、どのように対応されているでしょうか。

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26th Jul 2023

日本の英文契約実務のサポート:国際ビジネスのための専門的なリーガル・サービスについて

日本の英文契約実務のサポート – プロジェクトが日本に所在している場合であっても、外資系企業と共に事業を行う場合の契約交渉には気をつけなければいけないことが多々あります。

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17th Jul 2023

英文業務委託契約と日本の法律事務所:秘密保持契約とNDAの重要性

ビジネスにおいて、業務を外部委託することは一般的な手法です。英語を使用した業務委託契約は、国際ビジネスにおいて特に重要な役割を果たします。

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24th Jun 2023

東京の法律事務所:しっかりとした法的解決策をご提案する日米のダブルライセンス弁護士について

企業のサイズを問わず、日本企業が海外に進出するのは珍しくなくなりました。そうすると現地でのコンプライアンスに関しても注意をしなければなりません。

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20th Jun 2023

異なる法制度をつなぐ:東京で英文契約に関する法的サービスを提供する日本とアメリカの弁護士

このようなとき、日本語と英語の両方で契約書のレビューが必要になりますが、そのプロセスは、大きく二つに分かれます。

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