英文の秘密保持契約への対応について

英文の秘密保持契約への対応について

19th Oct 2023

英文の秘密保持契約への対応について

日本であっても、外国であっても、ビジネスの一番最初に秘密保持契約を締結することは多いのではないかと思います。日本語であっても法律用語が記載されていると読みにくく感じる方がたくさんいらっしゃいますが、それが英語になると、さらにハードルが高くなります。

しかしながら、秘密保持契約を締結しなければ、重要な秘密情報は開示されません。いち早くビジネスチャンスを掴みたいときに、秘密保持契約を締結できないと、必要な情報が得られないというもどかしい状態になってしまいます。しかし、秘密保持契約とはいえ、内容のわからないものにサインをするのは避けなければなりません。このようなときにどのようにご対応されるでしょうか。

一番最初に思いつくのは翻訳だと思います。英語を日本語に翻訳すれば、二つのハードル(英語と法律論)のうち、一つはクリアされるからです。

さまざまな翻訳ツールが開発され、簡単な英文はかなりの精度で翻訳できるようになりました。ここは大きな進歩です。

シンプルな英文の秘密保持契約であれば、翻訳ツールで十分なケースもあるのではないかと思います。

ただし、無料のオンラインツールの場合、その翻訳ツールを開発している会社に情報が伝わってしまいます。秘密保持契約の翻訳をしていて、その内容が第三者に伝わっているというシニカルな状態にはなってしまいますが、コストとの見合いでこのような方法も一つのやり方になっているのではないでしょうか。

しかしながら、このような方法は未だ万全ではありません。翻訳という作業は、法律論と密接に結びついており、そもそも法律論をしっかりと理解していなければ正確な翻訳は不可能だからです。例えば、次のような条項があったとします。

Duty of Confidentiality
Receiving Party shall hold and maintain the Confidential Information in strict confidence for the sole and exclusive benefit of the Disclosing Party. Receiving Party shall carefully restrict access to Confidential Information to employees, contractors and third parties as is reasonably required and shall require those persons to sign nondisclosure restrictions at least as protective as those in this Agreement. Receiving Party shall not, without the prior written approval of Disclosing Party, use for Receiving Party’s benefit, publish, copy, or otherwise disclose to others, or permit the use by others for their benefit or to the detriment of Disclosing Party, any Confidential Information. Receiving Party shall return to Disclosing Party any and all records, notes, and other written, printed, or tangible materials in its possession pertaining to Confidential Information immediately if Disclosing Party requests it in writing.

最初の一文は比較的短いものの、次の文章は5行程度の長さです。一文が長いとどの部分がどの部分を修飾しているかが分かりにくくなり、翻訳が難しくなります。

また、英文契約では、頻繁にshallという助動詞が使われます。これは義務を示す法律用語で、willよりも義務を強く表現する機能を持ちます。

最後の文章では、秘密情報がプリント等された者は、秘密を開示する側が依頼したときには返却しなければならないという文章です。あらゆる情報がサーバーに保存されているのが普通になっている現代において、どこまで機能するか疑問ではありますが、現実にはこのような表現はNDAによくあります。修正を提案するのも一つではありますが、すぐにビジネスを始めたい場面において、どこまで交渉するかというのは一つのビジネス判断です。

秘密保持契約であっても、各条項の重要度に差があり、そのどこを交渉するのか、あるいは交渉しない方がプロジェクト全体にとって良いのかどうか、そのような総合的な判断が必要になります。

このような場面において、弊事務所では、クライアントのご意向を大切にしています。ただ、そのご判断に資するような情報をしっかりとご提供差し上げ、「こんなつもりではなかった」という事態を防ぐのが一番であると考えています。

秘密保持契約を締結する場面というのはプロジェクトの初期であると思いますが、ぜひお気軽にお問い合わせください。

服部法律事務所 

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