
服部真吾 – 服部法律事務所
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日本の法制度や実務慣行では、近年ますます、しっかりとしたコンプライアンス体制とクライシス・マネジメントの整備が重視されるようになっています。
日本のコーポレートガバナンス・コードの原則2-5では以下のように規定しています。
「上場会社は、その従業員等が、不利益を被る危険を懸念することなく、違法または不適切な行為・情報開示に関する情報や真摯な疑念を伝えることができるよう、また、伝えられた情報や疑念が客観的に検証され適切に活用されるよう、内部通報に係る適切な体制整備を行うべきである。取締役会は、こうした体制整備を実現する責務を負うとともに、その運用状況を監督すべきである。」
また、同コードの補足原則では、以下のように規定しています。
「2-5① 上場会社は、上場会社は、内部通報に係る体制整備の一環として、経営陣から独立した窓口の設置(例えば、社外取締役と監査役による合議体を窓口とする等)を行うべきであり、また、情報提供者の秘匿と不利益取扱の禁止に関する規律を整備すべきである。」
内部通報の枠組みに明確な基準はないものの、2024年には数千人規模の従業員を抱える大企業を追い詰め、経営陣を窮地に陥れた内部通報事例が起こりました。この種の事例にはメディア報道など様々な側面がありますが、企業にとって内部通報制度の一定の仕組みの準備や実施が必要であることを示しています。
公益通報者保護法の改正により、告発者保護が強化されました。従業員300人以上の企業が法令違反を行い、行政の命令に従わない場合、刑事罰が科されます。また同法第16条第1項に基づき、行政官が帳簿・書類等の検査のため事務所に立ち入る権限を規定しています。
内部告発を理由に従業員を解雇・懲戒処分した個人に対しては、新たな直接罰則(6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金、またはその両方)が設けられました。企業に対する法定罰則は、法第21条・23条に基づき3,000万円以下の罰金が科される可能性があります。
外国企業が刑事罰を受ける場合、日本国内における企業評価に重大な影響を及ぼし、さらに、日本でのレピュテーションが低下することによって、グローバル市場でも企業の信頼性を揺るがす可能性があります。
この公益通報者保護法改正は2025年6月4日に公布され、2026年末頃に施行される予定です。
日本には統一的な「コンプライアンス法」は存在しませんが、上場企業はコーポレートガバナンス・コード(ESGや企業倫理を統合的に扱う基準)および金融商品取引法(内部統制報告書の提出を義務付ける)を遵守する必要があります。全ての企業に対し、行動規範の策定と内部通報窓口の設置が推奨されています。
改正された公益通報者保護法は報復行為を禁止し、従業員・役員・外部委託者(請負契約者等)が恐れずに不正行為を通報できるよう保護の対象になります。通報を妨害した者は刑事罰の対象となります。
金融関連法令や会社法違反(証券詐欺、インサイダー取引など)は行政罰金や刑事訴追を受ける可能性があります。規制対象業界におけるコンプライアンス違反(環境汚染など)では、企業は業務停止命令や営業停止処分を受ける可能性があります。証券取引所や監督当局が自主的な是正措置や事業再構築を要求する場合もあります。
明確には義務付けられていませんが、コーポレートガバナンス・コードの原則2-3では、危機管理計画(災害対策や人権問題を含む)を長期的な価値と結びつけています。
「【原則2-3.社会・環境問題をはじめとするサステナビリティを巡る課題】上場会社は、社会・環境問題をはじめとするサステナビリティを巡る課題について、適切な対応を行うべきである。」
「補足原則 2-3① 取締役会は、気候変動などの地球環境問題への配慮、人権の尊重、従業員の健康・労働環境への配慮や公正・適切な処遇、取引先との公正・適正な取引、自然災害等への危機管理など、サステナビリティを巡る課題への対応は、リスクの減少のみならず収益機会にもつながる重要な経営課題であると認識し、中長期的な企業価値の向上の観点から、これらの課題に積極的・能動的に取り組むよう検討を深めるべきである。」
特に金融業界や医療分野においては、正式に危機管理委員会を設置する等、事業継続計画(BCP)ガイドラインの遵守がますます求められています。
このような制度を検討されている場合は、貴社の状況に合わせた法的サポートをご提供いたしますので、ぜひ当事務所までご相談ください。
弁護士 服部 真吾 第二東京弁護士会
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